東京女子大学 人文学科 英語文学文化専攻

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溝口先生インタビュー

先生へのインタビュー・シリーズ
溝口昭子先生にインタビューしました!!

先生の専門分野を教えてください。

 アフリカの英語文学で、特に南部アフリカの文学を専門としています。最近はアフリカの文学とカリブの文学とアフリカ系アメリカ人の文学の関係にも興味を持っています。

なぜアフリカの英語文学に興味を持ったのですか?

 私がアフリカの英語文学に興味を持ったきっかけは、高校時代に遡ります。私は高校生のときにオーストラリアに一年間留学しました。私がホームステイをした家庭は農家だったので、農業に興味を持つようになりました。そして、将来はアジアやアフリカで農業の技術を教えたいと思ったのですが、文系だったので両親に農学部受験を反対されてしまいました。そこで、海外でなにかを教えるためには英語が必要だと思い、もともと文学も好きだったのでまずは英文科に進むことにしたのです。大学ではアジア・アフリカとつながろうと、フィリピンに関わるNGO系サークルに入っていたのですが、そのサークルの人に、アジア・アフリカにも英語文学があり、フィリピンにもあることを教えてもらいました。興味を持った私はフィリピン文学で卒業論文を書こうと思っていたのですが、さすがに前代未聞ということで先生方の間で問題になり、学部ではまだ無理と言われてしまいました。ではせめて英国人がアジア・アフリカを舞台にして書いた植民地文学で書こうと思い、インドを舞台にした『インドへの道』(E. M. フォースター著) で卒業論文を書きました。
 これがきっかけでアジア・アフリカの英語文学をもっと学んで広めたいと思い、大学卒業後は大学院へ進みました。まずはやはり植民地文学から研究しようと思い、もっと政治的な作品を捜していたところ、ドリス・レッシングという英国人作家の作品に出会いました。彼女はローデシア(今のジンバブエ)の農場で育ちました。そのため、彼女の作品を読んだ際、私が高校時代にオーストラリアで感じたことと似ている点が彼女の作品にはあることに気付きました。また、ジンバブエもオーストラリアもそこの人の土地が白人入植者に奪われるという、植民地支配のされ方が似ていたのです。そこでレッシングと私の世界観がつながり、私は彼女の作品で修士論文を書きました。
 私はさらに深くアフリカの英語文学について研究するために、博士課程を休学してイギリスのリーズ大学へ留学しました。そこではアフリカやインドの英語文学、英国黒人文学およびカリブ文学などの授業を取り、最後にレッシングの作品とジンバブエのアフリカ人作家の作品について「農場」のテーマで論文を書きました。また、帰国前にはロンドンでレッシングにお会いしてインタビューをする機会にも恵まれ、その後はジンバブエを訪れ彼女の故郷にも足を伸ばし、ジンバブエ人作家に会うこともできました。もしも私が学部時代にやや特殊な背景を持つフィリピン文学で卒業論文を書いていたら、ここまで広い領域に触れることはなかったと思うので最終的にはアフリカ英語文学を選んで良かったと思っています。  これが、私がアフリカの英語文学に興味を持ったきっかけです。

海外で印象に残った出来事を教えてください。

 先ほども述べましたが、実際にレッシングとお会いできたことです。また、ジンバブエでも思い出は多いのですが、思わぬ体験としては、地元のある青年と結婚するような雰囲気を知らない間につくられてしまい慌てたこともありました…。(笑)
 一方で、支配者の言語である英語を学ばざるをえなかったアジア・アフリカの人々やその英語文学のことを学ぶうちに、日本人の植民地支配についての自分の知識の少なさを痛感することもありました。韓国の友人の家へ遊びに行った際、彼女のお父さんが私に日本語で話してくれたことがあります。しかし、その日本語は植民地時代に「日本人」として学んだものであると思うと申し訳ない気持ちになりました。また、シンガポールではインド系の友人のお母さんが「私は日本軍の統治下だったとき小学生だったから学校で習った日本の歌を少し歌えるわよ。」と言って私が知らない軍歌を歌ってくれたこともありました。日本が侵略者として描かれる映画をシンガポール人の友人たちと見たときは苦しい気持ちになりました。そのような経験を通して、日本人はアジアの人々と友人でいるためにも、過去を知らなければならないと思いました。

どのようなきっかけがあって東京女子大学で教鞭をとるようになったのですか?

 もともと私は東京女子大学の卒業生なのです。この大学で教える前は、栃木の大学で七年間教えていました。そうしたら、ある時東京女子大学の先生方から母校で教鞭をとらないかとお誘いの連絡をいただきました。念のため私の専門分野で本当にいいのですか?と尋ねたところ、それで結構ですというありがたいお返事を頂き、以来十四年間この学校で教え続けています。

東京女子大学の印象を教えてください。また、学生にメッセージがありましたら、お願いします。

 東京女子大学には真面目な学生が多いと思います。
 ただ、これはこの大学の学生に限ったことではないのですが、今の学生は常に就職活動を意識しているため、今しかできないことに挑戦する機会を失っているように感じることがあります。もちろん、インターン等でその会社や分野が自分に合っているかを前もって知ることができることは大変なメリットだと思いますが、時代が違うとはいえ、学ぶためというよりも就職のために大学生活を送っているように感じることもあります。でも教員も以前より余裕がないのも事実で、短期の目標達成を意識することが多くなり、じっくり学ぶような授業をすることが難しくなりました。
 私が大学を卒業してしばらくしてから、大学時代にお世話になった先生と偶然お会いしました。その際、先生は「溝口さん、あなたって昔から人の言うこと聞かないで勝手なことばかりしていたわね。でもそれがいいのよ。」と仰っていました。先生は私の個性を潰さずに見守ってくださったことに気付き、今でもその言葉は強く印象に残っています。
 やりたいことは多少他人と違っていても良いのです。人と違うことを追求することも大切なのです。私自身、追求する中で挫折したこともありましたが、それでも自分の芯として残るものがありました。また、失敗から学ぶことも多かったです。失敗をすると人の気持ちも分かるようになります。人とぶつかっても諦めずに悩み続ける姿勢を持ち続けてください。そうするうちに、自分がどういう人間になりたいか、もっと大きく言うとどのような世界を作っていきたいのか分かってくると思います。試行錯誤は今しかできません。挑戦する前から諦めずに、様々なことに挑戦してください。

おすすめの文学作品を教えてください。

ダグラス・ラミス著『イデオロギーとしての英会話』
ここに収められている同じタイトルのエッセイが私の世界観を変え、この分野に興味を持つきっかけとなりました。
キャリル・フィリップス著『新しい世界のかたち』
英国に居場所がないと感じていたカリブ系英国人の著者が、自らのアイデンティティを大西洋を越える移動のなかに見いだすエッセイです。彼が見たアフリカ、イギリス、カリブ海諸島、アメリカの作家や歴史が印象的に描かれています。
C. N. アディーチェ著『アメリカにいる、きみ』『半分のぼった黄色い太陽』
ナイジェリア出身の若手女性作家の小説です。ナイジェリアの人々が経験する、ときには衝撃的な出来事がみずみずしい感性で描かれています。
ドリス・レッシング著『老首長の国』
植民地時代の南部アフリカの人々と入植者である白人の姿が描かれている短編集です。悲しい話が多いのですが、彼女が描く視点からも事実を見つめなければいけないと思います。私にとってアフリカ文学への入口となった本です。

先生の趣味や好きなものを教えてください。

 歌を歌うことが好きです。最近は行ってないですが、週に一度カラオケに行くこともありました。また、絵を描くことも好きです。実は、昔、美大に目指したこともありました。今でも息抜きによく落書きをすることがあります。

2013年のZimbabwe International Book Fairにて、溝口先生が昔その短編を翻訳したCharles Mungoshi氏とともに。
(左から氏のお連れ合い(女優でもあった)とお孫さん、新人作家のLawrence Hoba氏、Mungoshi氏、そしてLet's Talk AfricanというウェブサイトのライターであるChipo Musikavanhuさん)
写真は溝口先生のご提供

Let's Talk African→http://letstalkafrican.blogspot.jp/2013/10/zibf-2013-in-pictures.html

アフリカで実際に使われている楽器も見せていただきました。

溝口先生のご研究活動から

○ 1993年に訪れたジンバブエについて先生が書かれた文学紀行です。インドの雑誌に掲載されました。
http://issuu.com/coldnoontravel-poetics/docs/2.3/104

○ 2014年のドイツのブレーメンでの学会発表の動画です。溝口先生は南アフリカ映画における言語表象について発表しました。
http://mlecture.uni-bremen.de/ml/index.php?option=com_mlplayer&template=ml2&mlid=2897

インタビューを終えて

 溝口先生が英文学に興味をお持ちになったきっかけやアフリカでの貴重な体験などのお話を通し、溝口先生の新たな一面を知ることができました。
 また、支配者としての日本のお話も非常に印象に残りました。恥ずかしながら、私は今まで日本は加害者であるよりも被害者であるという考えを持っていました。しかし、先生のお話を聞いて、加害者であった日本についても知らなくてはいけないと思いました。
 勉学以外の面においても、視野を広げて様々なものに興味を持つことが大切だと改めて感じたインタビューでした。お忙しい中インタビューに応じていただいた溝口先生に感謝しております。

Interviewer: Maho Kato
Photography: Risa Watanabe (except the photo taken in Zimbabwe, 2013)

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